今回は投手からの牽制についてお話したいと思います。
ご存知のように牽制には2種類あります。
投手板(プレート)を外した牽制、投手板を外さない牽制です。
私の考えとしては少年野球において、特に低学年のうちはルールを理解できていないため、まずは投手板を外した牽制を教える必要があると思っています。
それぞれ、何が違うのか、審判として何を気をつけないといけないのかご説明します。
投手板を外した牽制
まず、投手板を外すという行為について説明します。
ポジションが投手であっても、投手板に触れていない場合には野手と扱いになります。
投手板に触れていることによってルール上も「投手」という扱いになり、投手に対して課される所作の制約を受けることになります。
逆に言えば、投手板を外すことによって「野手」扱いになることから「投手」に課される制約が無くなります。
私がルールを知らない子ども達には、まずは投手板を外す牽制をと言うのは、ここに理由があります。そもそも投手に課される制約を子ども達が理解していないからです。
投手板を外すには、前外し、横外しは厳禁なので、後ろにしっかりと外す必要があります。
牽制時に投手板を外す行為は、牽制動作が若干遅くなりますが、以下のメリットがあります。
- 1,3塁に実際に投げない(偽投)が許される
これが大きなメリットでしょう。 - 送球する際にどんな投げ方をしても良い(送球塁に足を踏み出さなくても良い)
デメリットとしては、投手板を外した牽制が悪送球になったり野手が取れなかったりすることにより、プレイイングフィールドを出てしまってボールデッドになった場合に、野手からの送球となるためテイクツーになることです。
河川敷のグランドなどでは要注意です。
投手板を外さない牽制
投手板に触れていると「投手」扱いになりますから、様々な所作に関する制約を受けることになります。
牽制時に注意することとしては以下のとおりです。
- 自由な足(投球時に上げる足)が投手板の後縁を超えてはいけない
日本においては軸足とクロスしたらという誤った認識がはびこっています。本来その認識を改めていただきたいですが、審判員にもそのような認識を持っている方が多くいます。
なので、本意ではありませんが、とりあえずはクロスしないようにと教えるのが良いでしょう。
日本の選手はこの誤った認識で、世界大会にて良く牽制アウトにされます。 - 牽制時に自由な足を投げる塁にしっかりと踏みだす必要がある
自由な足を踏みだしていない、踏みだしが甘い、踏みだし方向が塁方向ではない(斜め)という場合にはボークを取られます。 - 1,3塁への偽投ができない
1,3塁に対しては実際に投げる必要があります。何かの拍子に投げるのを踏みとどまってしまうとボークになります。
ただし、2塁に対してだけは、自由な足を踏みだしていれば偽投が許されています。 - 投球動作の中断ととられない自然な牽制
例えば自由な足をあげた形で一定時間止まる投手がいますが、走者がいる場合にはボークを取られます。
こういった制約をしっかり理解しておく必要があるのが、投手板を外さない牽制です。
投手板を外さない牽制がプレイイングフィールドを出てしまった場合、投球扱いと同様にテイクワンとなります。
審判員としての心構え
審判員として自分の担当する塁にランナーがいる場合には、以下のことを心がけましょう。
- 投手が投手板を外したか外していないか
ほんの一瞬の所作なので、見るというよりは感覚を養う必要があります。私も最初は難しかったのですが、最近は感覚で分かるようになりました。
これにより偽投のボーク扱い、ボールデッド時の対応が違うので注意しましょう。 - 自由な足の踏み出し・投球動作の中断の確認(投手板を外していない場合)
ボークに該当する行為がないかしっかり確認をしましょう。 - 投球後はしっかりと打者に目を向ける
あまり投手に注意が行き過ぎると、実際に投球された場合も目線が投手に行きがちです。
まかり間違ってハーフスイングの確認が来てしまうと大変なことになりますので、牽制がないと分かった段階でハンズオンニーを解除し打者方向に視線を向けて打球に対してもすぐに対応できるように準備しましょう。 - 牽制があった場合のアウト・セーフコール
牽制があってもタッグがされないのであれば特にコールしなくても結構です。
一方で牽制アウトは一般的に際どいタイミングです。このときに迷った雰囲気を出すのは不信感しかないので、自信をもって大きなジェスチャーで「ヒズアウト!!」とコールしてください。もちろん際どいセーフも同様です。
以上、実は難しい牽制の話でした。