スリーフットラインとタッグプレイにおけるスリーフィートオーバーによるラインアウト

多くの野球人が勘違いをしてしいる似て非なるルールについてご紹介します。

まず、タッグプレイのときに3フィート(約91.5cm)を逃げて避けていけないことは多くのプレイヤーが知っています。

一方で本塁⇒1塁の後半にファウルラインの外3フィートに線が引いてあるのも何となく知っているプレイヤーは多いのですが、これが何のためにあるのかを「正しく」知っているプレイヤーは多くないでしょう。

同じ3フィートなので、このラインがタッグプレイで逃げていけない範囲だと思っている人が多くいます。

以下の動画を見てください。

バントをした打者が投手からのタッグを避けるためにファウルゾーンに逃げたところ、審判は間髪いれずにラインアウトでの打者走者アウトを宣告しました。

打者はスリーフットラインに残っている足跡を指さし、
「私は3フィート逃げてないぞ!そこに証拠があるじゃないか!」と言っているのでしょう。

果たしてこのジャッジは誤審だったのでしょうか。

ルールを見ながら紐解いていきましょう。

スリーフットラインは何のためにあるの?

まず、スリーフットラインに関するルールです。

スリーフィートラインと呼ぶ方もいますが、正式名称は「スリーフットレーン」。英語分からないので、基本しか知らない典型的な日本人である私には複数形でない違和感でしかない。

公認野球規則5.09(a)(11)
(a)打者アウト
打者は、次の場合、アウトとなる。

(11)一塁に対する守備が行なわれているとき、本塁一塁間の後半を走るに際して、打者がスリーフットラインの外側(向かって右側)またはファウルラインの内側(向かって左側)を走って、一塁への送球を捕らえようとする野手の動作を妨げたと審判員が認めた場合。この際は、ボールデッドとなる。
ただし、打球を処理する野手を避けるために、スリーフットラインの外側(向かって右側)またはファウルラインの内側(向かって左側)を走ることはさしつかえない。

【原注】スリーフットレーンを示すラインはそのレーンの一部であり、打者走者は両足をスリーフットレーンの中もしくはスリーフットレーンのライン上に置かなければならない。

ここで、多くの皆様が勘違いに気づくと思います。「スリーフットラインは、タッグプレイから逃れる時の基準ではないのか!」と。

スリーフットレーンは、一塁への送球に対し、スリーフットレーンの外を走っている時に送球に当たるなどして、捕球しようとする一塁野手の動作を妨げた場合に打者をアウトにするルールのためです。このレーン内を走っている際に送球に当たった場合にはナッシングとなります。

ですから、当規定にあるように一塁⇒本塁の後半に中途半端にしか引いてありません。

タッグプレイでのラインアウト

では、タッグ行為における3フィート逃げた場合のルールはどのようになっているのでしょうか。

公認野球規則5.09(b)(1)
(b)走者アウト
次の場合、走者はアウトとなる。
(1)走者が、野手の触球を避けて、走者のベースパス(走路)から3フィート以上離れて走った場合。
ただし、走者が打球を処理している野手を妨げないための行為であれば、この限りではない。
この場合の走者のベースパス(走路)とは、タッグプレイが生じたときの、走者と塁を結ぶ直線をいう。

ここで重要になるのは「ベースパス(走路)」の定義です。
多くの場合、「ベースパス(走路)」という言葉を使うときには、ベースとベースを結んだ直線をいいます。本塁⇔一塁であればファウルラインが該当します。
ただし、当規定においては特別に言及があり、タッグプレイが生じたときの走者と塁を結ぶ直線となっています。

野球のルールにおいて、次の塁に行くときには「ここを走りなさい」という規定はありません。
先のスリーフットレーンの規定は「スリーフットレーンを走れ。」ということではなく、「スリーフットレーンを走らなかった場合にアウトになることがある。」ということが書いてあるにすぎません。

つまり、本塁⇒一塁を走っている際、タッグプレイが発生した際にフェアグラウンドを走っていても良いが、その場合には外に逃げて良い限界は必然的にスリーフットラインよりも内側となります。

動画の再検証

先の動画を良く見てみましょう。

タッグプレイが生じる瞬間、打者走者はフェアグラウンドを走っています。タッグから逃げるために外側に膨らみスリーフットラインを踏んでいます。
打者走者は「スリーフットラインの上に足跡があるじゃないか!」と抗議していますが、それこそが3フィート以上逃げたことの動かぬ証拠ですね。

審判のナイスジャッジでした。
塁審はおそらくスリーフットラインは意識していなかったでしょう。3フィートというと、大人が手を伸ばしたときの長さとほぼ同じであり、つまりは伸ばし切っても届かなかったというのが、審判の一つの基準となっています。
何度も言うように、スリーフットラインが引いてあるのは本塁⇒一塁の後半だけですから、目に見えないラインを判断するためにはそのような基準をもっています。

審判をしていると、逆の抗議もあります。
例えば三塁⇒本塁での捕手のタッグ行為が甘く走者がうまく外側に逃げラインアウトを取らなかったときに、「ファウルラインからこんなに逃げてたじゃないか!」と。
基準はファウルラインではありません。走者がもともとファウルエリアを走っていれば、おのずとファウルラインから3フィートよりも外側に逃げて良いのです。

是非プレイヤーの皆様には無用な抗議の時間を使わないためにも覚えていただきたいルールです。